小説『恋する寄生虫』のあらすじや読んだ人の感想が知りたい!
映画化されたし、重要な部分はネタバレなしで簡単なあらすじを知りたい。
そんなお悩みにお答えします!
どうも、おみそです。
年100冊読書を楽しむ、当ブログ「くもゐなす茶房」の看板猫です♪
今回紹介する小説は、
<虫>によってもたらされた、臆病者たちの恋の物語
『恋する寄生虫』です。
漫画版の感想が知りたい方は、「漫画『恋する寄生虫』あらすじ・ネタバレ感想!【完結】【小説とのちがいも解説!】」の記事をご覧ください。
本書は、2021年11月12日に公開された映画『恋する寄生虫』の原作小説になります。
先に、本書を読んだ感想を言うと、
読者を物語の世界観に引き込ませる、とても魅力的な作品でした。
登場人物の純粋な恋心や切ない感情が伝わってきて、読み終わった後は胸を締め付けられます。
そして、読者を最後の最後まで飽きさせない展開。
ジャンルとしては恋愛小説になるとは思いますが、もう少し詳しく言うと、
恋愛✖ミステリー✖SF(寄生虫) といった感じでしょうか。
恋愛物語でありながら、読後には、
「人間にとっての幸せってなんだろう?」と考えさせられます。
この記事では、小説『恋する寄生虫』のあらすじと読んだ人の感想を書いています。
それでは、一緒に本の世界へ潜りましょう。
小説『恋する寄生虫』の概要
『恋する寄生虫』の基本情報は以下の通りです。
- 題名:『恋する寄生虫』
- 作者:三秋縋(みあきすがる)
- 出版社 : KADOKAWA
- 発売日 : 2016/9/24
- ページ数 : 322ページ
それでは、あらすじをみていきましょう。
小説『恋する寄生虫』のあらすじ
重要な部分のネタバレはしないよう配慮していますが、未読の方はご注意ください。
※作品を楽しんでいただくため、冒頭部分のみのあらすじになっています。
その冬 僕は遅すぎる初恋を経験した
高坂賢吾(こうさかけんご)
高坂賢吾は、社会生活に支障をきたすほどの極度の潔癖症。
そのせいで他人と接するのが苦痛でした。
「僕は人間に向いていない」と自負するほどで、その病から、転職を繰り返し、現在は失業中です。
そんな高坂にとっての唯一の趣味は、マルフェア(コンピュータウイルスのようなもの)を作ること。
彼はそのマルウェアに「Silent Night」と名付け、成功すれば12月24日の午後5時からの二日間、感染端末の通信機能をオフにすることができるように設計しました。
友人や恋人と連絡取れなくなった人々がクリスマスイブを一人で過ごさせることが
高坂の目論見です。
思えば、これがすべての始まりでした。
見知らぬ来訪者
ある日、高坂の家のインターホンが鳴り、同時にメールが届きます。
「ドアを開けろ。危害を加えるつもりはない。ウイルスの件で話がある。」
高坂のもとに見知らぬ来訪者が現れました。
その男は、なぜか高坂の潔癖症のことからマルウェアのことまで知っています。
彼は自らのことを和泉(いずみ)と名乗り、
マルウェアのことを公にしない代わりに子どもの面倒を見てほしいというのです。
その子供の名前は、
佐薙ひじり
和泉は言います。
「あんたの最初の任務は佐薙ひじりと友達になることだ。」
佐薙ひじり(さなぎひじり)
和泉に指定された場所に向かうと、そこには17歳くらいの少女が立っていました。
白金に染められた髪、がっしりとしたヘッドフォン、女子高の制服、
たばこをくわえたどこか気だるげな少女。
高坂「君と、友達になりたいんだ。」
佐薙「どうせ和泉さんに頼まれたんでしょ。」
「こういうの、あなたで七人目だから。」
全く相手にしてもらえない高坂。
ですが、高坂が佐薙と友達になると、和泉から報酬が出ることを知った佐薙は、
高坂が受け取る報酬の半分をもらい仲のいいふりをすることを佐薙は強引に決め、
次の日、報酬を受け取りに、高坂の自宅に行くことになります。
不潔の象徴が「他人」である高坂にとって、それは苦痛以外の何ものでもありませんでした。
孤独な二人の恋
不登校の佐薙は、日中行く当てがないため、高坂の自宅に通うようになります。
家では会話もなくただただ時間が過ぎていきます。
そんな日々が続いていましたが、あることをきっかけに、高坂は、
- 佐薙が視線恐怖症であること
- 高坂といると視線があまり気にならないこと
を教えてもらいます。
症状が和らいでいたのは高坂も同じでした。
お互いの病を打ち明けたことをきっかけに、少しずつ相手のことを理解していきます。
お互いのことを知り、不器用ながらも距離を縮めていく二人。
しかし、そんな幸せな日々は長くは続きませんでした。
二人の恋にはある秘密が隠されていたのです。
※この文章は三秋縋『恋する寄生虫』をもとに作成したものです。
小説『恋する寄生虫』の感想
いかがでしたでしょうか。
では、ここからは個人的な感想を述べていきます。
「虫」という存在
本書が一般的な恋愛物語と一線を画しています。
そう思わせてくれるのが、本書に登場する寄生虫の存在です。
「寄生虫」というと漫画「寄生獣」のようなグロテスクな印象がありますが、この小説ではそのような表現はありません。
どちらかというと、物語の重要な要素として寄生虫が存在しています。
小説の冒頭部分で佐薙が寄生虫について話をする場面が描かれています。
フタゴムシという寄生虫の話なのですが、これがとても面白い。
寄生虫に一切興味のなかった私が(たいていの人がそうかと思いますが。笑)
本書にも登場する「目黒寄生虫館」に行きたいと思わせるほどです。
また、後半の展開にも寄生虫が大きく関わってきます。
恋愛の物語は障壁があることで面白くなります。
「ロミオとジュリエット」であれば両家の確執
「花より団子」であれば、圧倒的な身分のちがい
「恋する寄生虫」では、その障壁が寄生虫になります。
ただの恋の話で終わらないのも、本書の魅力です。
恋愛に加え、ミステリーやSF的要素もあり、それらすべてに寄生虫が関わってきます。
これは、本当の恋なのか
「何から何までまともではなくて、しかし、紛れもなくそれは恋だった。」
これは『恋する寄生虫』を象徴する言葉です。
この言葉の通り、前半部分はいわゆる恋愛ものとしてストーリーが展開されるのですが、
ある事実をきっかけに状況が大きく変わります。
「この感情は本物なのか?」
「自分はいったい何者なのか?」
そんな二人の葛藤が物語に深みを与えてくれます。
引き算の幸せ
作者の三秋縋さんはあとがきで高坂と佐薙のあるシーンを「引き算の幸せ」と表現しています。
その他大勢にとってのありきたりがその人にとての最大の幸福だったりするわけです。
あなたにとってなんてことないことが私にとっての幸せであったり、
私がなんとも思わないことでも、あなたにとってはとても喜ばしいことであったりしますよね。
本書の読後に「引き算の幸せ」という言葉を見て、とてもしっくりきたのを覚えています。
客観的に見ると、高坂と佐薙が迎える結末は決して幸せなものではないように思います。
でも、それをどう受け取るのかは、当人次第です。
当人がそれをどう感じるか、が重要なのであって、
結局、人間は主観的な生き物なのだと痛感させられました。
周りからすれば大したことないようなことでも深く傷ついたり、他の人が見れば、どうでもよさそうなことがとても嬉しかったりする
そういうところが人間の身勝手な部分であり、愛おしいところなのかもしれません。
【引き算の幸せ】小説『恋する寄生虫』あらすじ・ネタバレ感想:まとめ
今回は、孤独な二人のラブストーリー『恋する寄生虫』のあらすじ、感想をお届けしました。
切なさや小さな喜びなどの機微を丁寧に表現されているうえに、
最後の最後まで飽きさせない展開
没入感を味わえる素晴らしい小説でした。
恋愛、ミステリー、SF好きの方は、ぜひ手に取ってみてください。充実した読書体験になると思います。意志や幸福について考えるきっかけにもなりますよ!
2021年11月12日からは、小松奈菜さん、林遣都さん主演で映画化されました!
映画のあらすじや感想が気になる方はこちらの記事「【映画感想&あらすじ】恋する寄生虫|これは恋の物語【原作との違いは?】」 をご覧ください。
SF要素のある作品を楽しみたい!という方はこちらの記事「全世代必見!アイの歌声を聴かせてのあらすじと見どころを徹底解説!【アニメ映画】」をご覧ください。
AIなどのSFジャンルを得意とする吉浦監督の映画作品です。
『恋する寄生虫』とは物語の雰囲気は異なりますが、観終わった後、笑顔になれる傑作です。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
この記事が少しでもあなたのお役立てていれば幸いです。
それでは、またお会いしましょう♪
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