『すべて忘れてしまうから』のあらすじや感想が知りたいな
『ボクたちはみんな大人になれなかった』がおもしろかったから燃え傘の他作品も気になるな
そんな疑問にお答えします。
この記事で分かること
- 燃え殻『すべて忘れてしまうから』はどんな作品?
- 『すべて忘れてしまうから』の感想
- おすすめエピソード3選(名言付き)
どうも、おみそ(@kumoinasu_omiso)です。年100冊の読書を楽しむ、当ブログ「くもゐなす茶房」の看板猫です
くもゐなす茶房のマスター・飼い主です。おみそと読書で学んでいます
今回紹介する本は、心が疲れた時にくり返し読みたい燃え殻のエッセイ『すべて忘れてしまうから』です。
私はこの本を友人に紹介されて購入して以来、1年以上に渡って読み続けています。
通しで、5回以上は読み返している作品です。
心が疲れてしまった時に寄り添ってくれたのはいつもこの本でした。
うまくいかない時や落ち込んだ時、心が疲れてしまった時にこのエッセイを読むと、とても効き目があります。
「そんなもんだよ。とりあえずできることだけやってれば十分だって。」と優しく寄り添ってくれる、心に点滴を打ってもらっているような気持ちになれる本です。
いっしょに本の世界を旅しましょう
燃え殻『すべて忘れてしまうから』とは?
『すべて忘れてしまうから』とは、小説『ボクたちはみんな大人になれなかった』で一躍有名になった燃え殻さんは書かれた初エッセイです。
『すべて忘れてしまうから』はどんな作品?
基本情報
- 題名:『すべて忘れてしまうから』
- 作者:燃え殻
- 画:長尾謙一郎
- 連載雑誌:週刊SPA!
- 出版社 : 扶桑社(ふそうしゃ)
- 発売日 : 2020年7月24日
- ページ数 : 221ページ
作者「燃え殻」はどんな人?
作者「燃え殻」
1973年、神奈川県生まれ。
テレビ美術制作会社企画、小説家、エッセイスト。
2017年6月30日発売、小説『ボクたちはみんな大人になれなかった』がベストセラーになる。それ以降、多くの媒体で作品を発表している。
↓燃え殻デビュー作の感想はこちら↓
>>燃え殻『ボクたちはみんな大人になれなかった』あらすじ・感想
叙情的な文章に心動かされる小説でした
『すべて忘れてしまうから』:感想
ここからは、エッセイを読んだ私の個人的な感想です。
心の底まで沁みるエッセイ
一言で感想を言うと、心の底まで沁みわたるエッセイでした。
エッセイは、自分の置かれている環境やその時の心情によって受け取り方が変わります。
少し時間を置いてから読み返すと、あまりはまらなかったエピソードがとてもしっくりくることもあります。
ですが、このエッセイは、どのエピソードをいつ見ても心に響いてしまう。
『すべて忘れてしまうから』は、感じてはいたけど蓋をしてしまっていた感情、思ってはいても誰とも共有せず受け流してしまった心の機微を思い出させてくれる。
だからこそ、私は1年以上にわたって、ことあるごとに読み返してきたのだと思います。
燃え殻さんの物語を通して、心が癒され、今の自分の心情と向き合うことができる、そんな素晴らしいエッセイでした。
また、人によって琴線に触れる部分は違うとは思いますが、多くの大人の心に響くエッセイだと思いました。
いろんな方のエッセイを読んできましたが、『すべて忘れてしまうから』はエッセイが不慣れな読者でも親しみやすい。
というのも、『すべて忘れてしまうから』は、エッセイでありながらストーリー性もある、物語のようなエピソードが多いからです。
「あまりエッセイを読んでこなかった」という方にもおすすめです
お気に入りのエピソードが心の点滴になる
1年の間に、全体を通して5回以上は読んでいる本です。
ですが、それ以上に何度も読んでいるお気に入りのエピソードがいくつもあります。
ふとした瞬間にそのエピソードたちを読み返すとふっと心が軽くなる。
それだけでなく、今の自分の心の状態を観察することもできます。
まるで、心に点滴を打っているような感覚になるエッセイです。
いざというときのために、自分のお気に入りのエピソードがあると、心の支えになるかもしれませんね。
【あらすじと名言】おすすめエピソード3選:『すべて忘れてしまうから』
『すべて忘れてしまうから』には全50エピソードが収録されています。
その中でも特に印象的だったエピソードのあらすじと解説を3つに厳選してお届けします。
すべて10回以上は読み返した話です
- ➀気を遣うことに疲れたときに読みたいエピソード
- 「偉そうにするなよ。疲れるから」
- ②幸せを見失いそうになったときに読みたいエピソード
- 「MTVでも、見ていけよ」
- ③心の古傷が傷むときに読みたいエピソード
- 「生きていると全部が、元には戻らない」
気になったタイトルをクリックするとそこまでとべますよ
一つずつみていきましょう
偉そうにするなよ。疲れるから【気を遣うことに疲れたときに】
始めに紹介するのは、燃え殻さんの亡くなった祖父とのエピソードです。
燃え殻さんの祖父はスーパーマーケットを営んでいて、よく働く人でした。
高校生の頃、そんな祖父のもとで燃え殻さんがアルバイトをしていたある日のことです。
買った肉の味が悪いと、文句を言ってきたおばあさんがいました。
それに対して、祖父はこれでもかというほど頭を下げて、おばあさんに誠心誠意謝りました。
しばらくして、祖父はいくつもの病気にかかり入院することになります。
燃え殻さんがお見舞いに行ってときのことです。
血圧を計ってもらった祖父は、看護師さんに向かって「ありがとうございます」言いお辞儀をしました。
あの日と同じように深々と頭を下げていたのです。
その時に燃え殻さんは、こう言ってしまったのです。
「いつも頭下げてばっかじゃん」
この一言に対する祖父の返答がとても心に沁みたので、一部抜粋して紹介します。
祖父はニコニコ笑いながら、「鼻を上にあげてみろ」と僕に言った。
僕は祖父に言われるがまま、鼻の穴が丸見えになるくらい頭をあげた。
祖父は「その体勢、疲れるだろ?」と言って僕に向かって深々と頭を下げてみせた。
「この体勢のほうが楽なんだよ」
燃え殻『すべて忘れてしまうから』より一部抜粋
「いいか、偉そうにするなよ。疲れるから」
燃え殻『すべて忘れてしまうから』より一部抜粋
本当に体勢が疲れるからという理由もあると思います。
ですが、おじいちゃんが伝えたかったのはそれだけではなかったのではないでしょうか。
相手に誠意を尽くすというのは、例えそれがどのような関係性であっても大切なことです。
燃え殻さんの祖父は、自身の生き方を通して、そのこと伝えてくれたのです。
「謙虚でいなさい。」というメッセージをこんなにも説教臭くならずに伝えたエピソードを私は他に知りません。
社会的な地位や立場に関わらず、相手に謙虚でいられる人は素敵です。
自分も謙虚な人でいたいですよね。
ときに謙虚でいることが馬鹿らしくなったり、疲れてしまったりします。
ですが、このエピソードを読み返すたびに、「偉そうにすると疲れるから、とりあえず謙虚でいよう。」と思わせてくれます。
そして、このエピソードのよさは最後の一文にもあります。
その一文を読むと、思わす切なさを感じてしまうのです。
最後の一文は実際に読んでお楽しみください
MTVでも、見ていけよ【幸せを見失いそうになったときに】
それがお金になるかは別として、人は誰しも何かしらの才能を持っています。
燃え殻さんの小学校時代の友人である林は勉強の天才でした。
林の家でファミコンをして遊ぶとき、一機交代でシューティングゲームをしていたそうです。
燃え殻さんがプレーする間、林は漢字ドリルをやり、林がプレーする間、燃え殻さんは『北斗の拳』を読んでいました。
その後、彼は漢字テストで日本一になり、大学は東大に入りました。
「いつ勉強したの?」と聞くと、彼はこう答えました。
「ファミコンの間とか休み時間に参考書を読んでいたかな」
「読んでいると、面白くなって、気づくと頭に入っちゃうんだよ」
勉強の天才もいれば、働かない天才もいます。
燃え殻さんの知り合いには、45歳まで定職につかず、バイトをたまにしながら高円寺の風呂なしアパートに住んでいる友人がいます。
燃え殻さんは年に数回、彼のアパートに行くことが心の安定剤になっていたのです。
そして、部屋に入ると決まって友人はこう言って燃え殻さんをもてなします。
「MTVでも、見ていけよ」
MTVは音楽番組です
二人でただMTVを見る時間に癒されながら、燃え殻さんは思うのでした。
カネが儲かるとか、社会的に偉くなるとかの才能は分かりやすいけれど、別に僕たちの血肉までが資本主義なわけじゃない。勝った負けたが、僕たちを必ず幸せにしてくれるわけでもない。
各々が無心になれる何かをずっと続けられることが、勝った負けたなんでチンケなことを考えなくてもいい状態を作ってくれるんじゃないのかなと、資本主義の成功者たちが歌うきらびやかな映像を見ながら、ぼんやりと考えていた。
燃え殻『すべて忘れてしまうから』より一部抜粋
このエピソードを読むといつも、資本主義と幸せについて考えます。
資本主義社会で生きていると本当の幸せを見失いがちです。
勉強の天才である林がそうであったように、何かの天才は、それ自体を楽しむことができます。
楽しんでいるから自然と身に付いて、努力を努力と感じることなく、努力ができてしまうのです。
これは仕事でも同じことが言えます。
楽しくないことをいくら必死に頑張ったとしても、それを楽しんでいる人以上の成果を出すことは難しい。
例えその人以上に成果を出せても、あくまで結果論でしかありません。
一時的に喜ばしい気持ちになれるとは思いますが、結果だけでは、人は幸せになれないように思います。
自分が楽しい、やりがいがあると思えることをして、それが誰かのためになっている。
自分がしたことで誰かが喜んでくれる。その喜んでもらった分、お金が発生する。
もちろん、実際の社会はそんなに簡単な構造ではありません。
理不尽なことがたくさんあるし、人を騙してまでお金を得ようという人もいます。
ですが、「自分がしたことで誰かが喜んでくれて、自分も嬉しくなる」状態こそ、資本主義社会を生きるわたしたちの幸せだと、わたしは思います。
青い鳥はいつも私たちの目の前にいます。
幸せというのは、何かを手に入れたり、何かになったりするから得られるものではありません。
幸せは結果ではなく、無心になって何かをしている、その状態なのだと思い出させてくれます。
子供の頃、夢中になっておにごっこをしたように。
別に、偉くならなくても、お金持ちにならなくてもいいんです。
それが、自分にとって無心になって続けられることであればなんでもいい。
ぼくが夢中になれることってなんだろう...
無理に見つけようとしなくてもいいんだよ。生きていればきっと見つかるから
生きていると全部が、元には戻らない【心の古傷が傷むときに】
- 後悔していること
- なかったことにしたいこと
- 人に知られたらみっともないこと
- 一生残ってしまいそうな左瞼の傷
誰しもが、心や体に一生消えないであろう"傷"があると思います。
では、私たちはその"傷"とどう向き合っていけばいいのでしょうか。
燃え殻さんはこう言います。
生きていると全部が、元には戻らない。
壊れた部分は壊れたまま、抱きかかえながら生きていくしかない。
燃え殻『すべて忘れてしまうから』p160より引用
見ないふりをするわけでもなく、治そうとするのでもなく、"傷"を抱えて生きていくしかない、ということです。
燃え殻さん自身、過去に精神疾患により休職をした経験があるそうです。
休んでいるときに燃え殻さんが社長にかけてもらった言葉が印象的だったので、最後に紹介します。
「絶対」じゃなくていい、「とりあえず」を心がけてみろ
燃え殻『すべて忘れてしまうから』p160より引用
『すべて忘れてしまうから』のレビューをチェックする
まとめ:燃え殻の初エッセイ『すべて忘れてしまうから』感想
心が疲れた時にくり返し読みたいエッセイ『すべて忘れてしまうから』をお届けしました。
今回紹介したエピソード以外にも心に沁みるエピソードがたくさん詰まったエッセイです。
3つのエピソードのどれか一つでも心を動かされたという方は、本書を手に取ってみることをおすすめします。
一冊持っておくと、いざ心が疲れてしまったとき、点滴のように心を癒してくれます。
『すべて忘れてしまうから』の続編エッセイ集の内容が気になる方はこちらの記事「燃え殻『夢に迷って、タクシーを呼んだ』名言9選」をお楽しみください。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
この記事が少しでもあなたのお役立てていれば幸いです。
それではまたお会いしましょう♪
おみそのつぶやき:おすすめエッセイ紹介
くもゐなす茶房ではさまざまなエッセイの感想を取り揃えています♪
おすすめエッセイまとめ
2年間様々なエッセイを読み続けてきたわたしが、厳選した本を紹介しています!
「面白い」「人生の本質」「疲れた心に」などテーマごとに分けて解説しています。
今のあなたの心にぴったりのエッセイが見つかりますよ
ハ・ワン著『あやうく一生懸命生きるところだった』
頑張りすぎている人に贈りたい一冊です。
若林正恭エッセイ『ナナメの夕暮れ』
社会に"生き辛さ"を感じていたオードリー若林のエッセイ『ナナメの夕暮れ』の感想はこちらです。
『すべて忘れてしまうから』が好きな人には響くと思います。
星野源エッセイ『いのちの車窓から』
星野源さんのエッセイです。心の機微を温かい言葉で綴っています。
チェックしてね♪