ブックレビュー おすすめ小説

【書評】燃え殻『ボクたちはみんな大人になれなかった』あらすじ・ネタバレ感想!【Netflix配信】

※本サイトで紹介している商品・サービス等の外部リンクには、アフィリエイト広告が含まれる場合があります。

小説『ボクたちはみんな大人になれなかった』のあらすじや感想が知りたい!

映画化されたし、重要な部分はネタバレなしで簡単なあらすじを知りたい!

そんなお悩みを解決します!

おみそ
おみそ

どうも、おみそです。

年100冊読書を楽しむ、当ブログ「くもゐなす茶房」の看板猫です♪

今回紹介する小説は、映画化で話題の作品、燃え殻『 ボクたちはみんな大人になれなかった』です。

43歳のボクが人生で唯一、"自分よりも好きになった人"との思い出を振り返る「大人が泣く」ラブストーリー。

主人公であるボクの物語を通して、つい、誰かを思い出してしまう。

そんな小説『ボクたちはみんな大人になれなかった』のラストまでのあらすじとネタバレ感想をお届けします。

おみそ
おみそ

本の世界へ一緒に潜りましょう♪

未読でも楽しめる!『ボクたちはみんな大人になれなかった』:あらすじ

「ボクたちはみんな大人になれなかった」の物語をイメージした写真を貼りました。
「ボクたちはみんな大人になれなかった」 イメージ写真

先に、物語のあらすじを一文で表すと、「主人公のボクが初恋の彼女と出会って別れるまでを回顧する」ストーリーです。

ボク自身に大きな事件が起こるわけでもなく、ラストに劇的な展開が待っているわけでもありません。

言ってしまえば、ただただボクが青春の日々を振り返るだけの話です。

ですが、この小説のよさはストーリーではありあせん。

主人公の感性をリアルに感じ取ることができるリリカルな文章。

いわゆる「エモい」と言われる理由はそこにあります。

ただ、万人受けする小説でないことも確かです。

読む人を選ぶ作品であることは間違いありません。

  • 今でも忘れられない好きだった人がいる
  • 1990年代、もがきながらも都会で生きた若者だった
  • 生きていく中で、様々な別れを経験してきた大人
  • 「うれしい時にかなしい気持ちになるの」という台詞が刺さる人

こんな方は本作を楽しめると思います。

では、43歳のボクが1990年代の青春を振り返る『ボクたちはみんな大人になれなかった』のあらすじです。

自分より好きになった人

43歳のボクは神谷町に向かう地下鉄でフェイスブックを眺めていた。

映し出されるひとりの女性のアイコン。

気づけば、そのページから目が離せなくなっていた。

「かおり」

苗字が変わっていた彼女は、かつて"自分より好きになった人"だった。

満員電車に揺られるボク。

気付いたときには、友達申請の送信ボタンを押していた。

"友達リクエストが送信されました"

投稿内容を見ると、彼女は「あのころダサいと思っていた大人」に限りなく近づいていました。

でも、それはボクも同じ。

年齢を重ね、ある程度の社会的地位を手にしてもなお、忘れることができない人。

ダサくても大丈夫な彼女の日常は、ボクには眩しく、幸せに見えていました。

そんな彼女と「さよなら。」も言わずに別れた。

1999年の夏。

「今度、CD持ってくるね」

それが、彼女から聞いた最後のセリフにでした。

都会でもがいたボクの話~結末まで!~

アルバイト雑誌の文通コーナーで知り合った "忘れることができない人" かおりとの初恋とその終わり。

かつて働いていたエクレア工場で出会った七瀬との別れと再会。

転職先の美術製作会社で20年以上仕事をした関口の退職。

六本木のクラブでのパーティーで出会ったスー

都会で出会いと別れを繰り返し「大人」になったボク。

あの時言えなかったお別れの言葉を、もう出会うことのない彼女、かおりに伝えます。

「キミは大丈夫だよ、おもしろいもん」

どんな電話でも最後の言葉は、それだった。彼女は、学歴もない、手に職もない、ただの使いっぱしりで、社会の数にもカウントされていなかったボクを承認してくれた人だった。

あの時、彼女に毎日をフォローされ、生きることを承認されることで、ボクは生きがいを感じることができたんだ。

ボクはまっすぐ前を向いたまま、彼女に言う。

「ありがとう。さようなら」

燃え殻『ボクたちはみんな大人になれなかった』より一部抜粋

燃え殻 『ボクたちはみんな大人になれなかった』:ネタバレ感想

本を読む子供の写真を貼り、感想を述べる様子をイメージできるようにしました。
本を読む子供 感想

泣けない、あまり共感できない、でも面白かった

結論から言うと、私は泣かなかったし、あまり共感できませんでした。

「このストーリー展開は素晴らしい!」と感じるわけでも、物語から目が離せなくなるわけでもありません。

それでも、私は面白いと感じました。

その理由は、燃え殻さんの文章にあります。

どこか陰影を感じさせる叙事的な文章

余韻が残る台詞

私がこの小説の読書体験に価値を感じたのは、読んでいる時々に思いを馳せる時間です。

普通に生きていたら見逃してしまうであろう、心の機微を絶妙な言葉に乗せて私たちに届けてくれる。

燃え殻さんがこれまでいろんなことを考えて、心に留めながら、その感情の一つ一つに名前を付けてきたからこそ、この私小説を生み出すことができたのだと感じました。

心の奥の方にしまってある思いを言葉にして、ボクが感じたリアルな感覚が読者に伝わってくる。

燃え殻さんの文章にはそんな魅力があります。

だから、登場人物にあまり共感できなくても作品を楽しむことができました!

『ボクたちはみんな大人になれなかった』おすすめシーン&名言3選!

夕焼けの写真を貼ることで、おすすめシーンをイメージしやすくしました。
夕焼け おすすめシーンのイメージ

おすすめシーンを3つに厳選してお届けします。

  • かおりがボクに言ったセリフ「うれしい時にかなしい気持ちになるの。」
  • あるクリスマスイブのこと
  • 別れ際スーが残した3文字の言葉

どれも読んだ後、本を閉じて思わず考えてしまう、そんなエピソードたちです。

うれしい時に、かなしい気持ちになるの。

うれしい時にかなしい気持ちになるの。

これは、ボクの彼女であるかおりが涙を流した時によく言っていた言い訳です。

きっと、うれしいことがあるとその先に待っているかなしいことを想像してしまうのではないかと思いました。

おみそ
おみそ

名言ですね...

うれしい時にかなしくなるというのは、そのうれしさを最大限に噛みしめているからこその感情ですよね。

人との出会いがあるから別れがあるように

物事には始まりがあるから終わりがあるように

希望があるから絶望があるように

うれしいことがあるからかなしいことがある。

表裏一体なのですね。

出会いと別れを繰り返して、人は大人になっていくのでしょうか。

この小説のテーマを感じさせるかおりの一言でした。

蛇足ですが、BUMP OF CHICKENの「グッドラック」という曲の冒頭にこのような歌詞があります。

「君と寂しさはきっと一緒に現れた」

これもまた、出会えたことの喜びと同時に、別れることの寂しさを感じたという感情を歌っていて、どこかかおりのセリフと通ずるところがあるように感じます。

複雑な感情に名前を付けるというのは芸術であって、それができる人を本当に尊敬します。

あるクリスマスイブのこと

クリスマスイブの六本木にボタ雪が降っていた。この日、ボクを待っていたのはクリスマス特番で急遽必要になったテロップ制作の仕事だった。雨ガッパを着てバイクで制作物の配達に出る。

走り始めて5分、路上の一部がアイスバーンになっていたことに気付かなかった。次の瞬間、ボクはしたたかに道路に打ちつけられた。テロップの束が散乱して、請求書が溶けた雪に沈んでいった。穿いていたジーンズは左側が激しく破れて、血がドクドクと流れていた。左手も黒い血がまったく止まらない。

散乱した荷物を拾うボクを助けてくれる人はゼロだった。ボクはこの社会の中でまだ数に入ってなかったのだ。

突然「大丈夫?」が立ち止まり、血まみれの左手をグイッと引っ張った。

コイツには俺が見えるのか?

男は傷口を確認したあと、テロップを一緒に拾ってくれた。

彼は集めたテロップをボクに渡さすと、躊躇なく「早く届けてこいよ」と言ってくれた。ハンカチをボクの左手にキツく縛って「少しは持つだろうから」とだけ言うと、雑踏の中に消えていった。

燃え殻『ボクたちはみんな大人になれなかった』より一部引用

ボクに手を差し伸べてくれた人は同じビルの3階にいた若い男でした。

後日お礼を言いに行くともうそこに彼はいませんでした。

それからずいぶん経って、ボクは週刊誌の記事を読んで、彼にもう二度と会えないことが分かったのです。

ボクからすればバイクでの事故は「災難なできごと」です。

「なんでクリスマスイブに仕事をして、さらに事故になんか遭わなきゃいけないんだ!」と自分に降りかかった災難を憂いている主人公を描いてもいい。

でも燃え殻さんは、"災難なできごとが起こったときに一人だけ手を差し伸べてくれた人"に焦点を当てて物語を書いています。

燃え殻さんのファインダーを通すと、どうしようもなく惨めな思いをしたエピソードすら切なく描いてしまうのです。

「言えなかったお礼」

「もう会えない人」

燃え殻さんは"伝えられないままの言葉"をテーマにすることが多く、私はそれが好きです。

例えば、本作『ボクたちはみんな大人になれなかった』でのボクの子供時代のエピソード。

燃え殻さんのエッセイ『すべて忘れてしまうから』の「俺、もう16だからタバコやめるわ」で描かれている友達とのエピソード。

「お別れを言えず、もう二度と会うことはない」というのは彼女のかおりにも共通します。

別れ際、スーが残した3文字の言葉

ボクが部屋から出ていく間際のスーとの会話です。

「あなた」

「ん?どうした?」

「忘れ物」

「忘れ物?は、ないと思うよ」

「だね」

スーはそう言うと笑顔を作って見せた。

燃え殻『ボクたちはみんな大人になれなかった』p129より引用

これがスーとボクが最後に交わした言葉になりました。

なんてことのない会話ですが、意味が分かると途端に切なさがこみ上げてきます。

個人的に一番好きなエピソードです。

未読の方には「???」だと思いますが、これは実際に本書を手に取って、楽しんでもらえたらと思います。

読み終わった後に、

p111【スーとの恵比寿の居酒屋でのエピソード】

→p129【スーとの別れ】

→p132【ラジオDJのセリフ】

と読み返すとこの言葉がより切なく感じます。

(※文庫本のページです。)

本作は他にも、心に沁みるエピソードがたくさんありました!あなたもお気に入りのエピソードを探してみてはいかがですか。

【書評】燃え殻『ボクたちはみんな大人になれなかった』あらすじ・ネタバレ感想!【Netflix配信】:まとめ

今回は、大人の切ないラブストーリー『ボクたちはみんな大人になれなかった』のあらすじと感想をお届けしました。

読んでいて誰かを思い出さずにはいられない。物語を通して、自身の思い出を振り返ったり、青春時代を回顧したいという方は、この小説を手に取ってみてはいかがでしょうか。

2021年11月5日(金)より映画化! Netflixでの配信がスタートしました!

本作の他にも燃え殻さんは作品を発表しています。

燃え殻さんのエッセイの内容や感想が気になるという方はこちらの記事「【心の点滴】『すべて忘れてしまうから』感想|燃え殻の初エッセイ」をおすすめします。

5回以上読んだ私が解説しています。心に沁みるエピソードがたくさん詰まったエッセイです。

最後まで読んでいただきありがとうございました。

この記事が少しでもあなたのお役立てていれば幸いです。

おみそ
おみそ

それでは、またお会いしましょう。

スポンサーリンク

  • この記事を書いた人

おみそ

「読書で、人生に彩りを。」くもゐなす茶房では、ブログを読んだ人が月1冊以上の読書を楽しんでもらえるよう、本当に面白いと思った本だけを紹介しています。記事を書いているのは、年間100冊以上の読書を楽しむ、くもゐなす茶房の看板猫|”おみそ”です。おみそと飼い主と一緒に喫茶店でお話している感覚で楽しんでもらえたらうれしいです✨ 詳しいプロフィールはこちら

-ブックレビュー, おすすめ小説
-, , , ,