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小説『世界から猫が消えたなら』あらすじ・感想&解説|消えてほしくないもの

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小説『世界から猫が消えたなら』を読んだ人の感想が知りたいなぁ

悩んでいる人(飼い主)

『世界から猫が消えたなら』の伝えたいことを解説してほしい!

悩んでいる人(飼い主)

こんなお悩みを解決します。

この記事で分かること

  • 『世界から猫が消えたなら』あらすじ
  • 『世界から猫が消えたなら』ネタバレなし感想
  • 詳しいあらすじ&テーマ解説【ネタバレ】
  • 『世界から猫が消えたなら』の次に読みたい小説
おみそ

どうも、年100冊の読書を楽しんでいる、おみそ(@kuminasu_omiso)です。当ブログ「くもゐなす茶房」の看板猫です♪

くもゐなす茶房のマスター・飼い主です。おみそに本のことを学んでいます!

飼い主

人はなぜか大切な何かを失って初めて大切だったことに気付く...

好きなコトやモノがある

家族がいる

気の置けない友人がいる...

当たり前が"ある"ことは実は当たり前ではない。分かっているのに、大切にできないこともあります。

そこで今回は、川村元気さん作、小説『世界から猫が消えたなら』のあらすじと感想をお届けします。

ネタバレありなしの両方を用意しているので、未読でも既読でもお楽しみいただけます。

おみそ

それでは、本の世界をいっしょに旅しましょう

小説『世界から猫が消えたなら』(川村元気)あらすじ【ネタバレなし】

『世界から猫が消えたなら』 あらすじ

あらすじや作品情報、作者紹介をしています。

ネタバレなしで読むことができます。

おみそ

読みやすさやテーマも解説しています♪

あらすじ:小説『世界から猫が消えたなら』

郵便配達員として働く三十歳の僕。ちょっと映画オタク。猫とふたり暮らし

そんな僕がある日突然、脳腫瘍で余命わずかであることを宣告される。絶望的な気分で家に帰ってくると、自分とまったく同じ姿をした男が待っていた。

その男は自分が悪魔だと言い、「この世界から何かを消す。その代わりにあなたは一日だけ命を得る」という奇妙な取引を持ちかけてきた。僕は生きるために、消すことを決めた。電話、映画、時計...僕の命と引き換えに世界からモノが消えていく。

僕と猫と陽気な悪魔の七日間が始まった。

川村元気『世界から猫が消えたなら』裏表紙より引用

『世界から猫が消えたなら』作品内容

著者川村元気(かわむらげんき)
ジャンルファンタジー小説
テーマ生きることの意味、失って気付く大切さ、家族
読みやすさ
文庫発売
出版年2012年
出版社小学館文庫
ページ数229ページ(文庫・解説込)
『世界から猫が消えたなら』作品内容

こんなときに読みたい!

  • 心温まる物語を読みたいとき
  • テンポよく読みやすい文章が読みたいとき
  • 自分の大切な人、モノを失ったとき

展開が分かりやすく、登場人物も限られているので、非常に読みやすいです。

一貫したテーマがある寓話的なお話ですが、物語としてとても面白かったです!

作者・川村元気さんについて

川村元気さんについて

  • 1979年生まれ
  • 映画プロデューサー(『電車男』『告白』等)
  • 『世界から猫が消えたなら』で小説家デビュー

川村元気さんは本作が初の著作!

映画の企画・プロデュース・脚本をメインに活動されています。

あの超大ヒット映画『君の名は。』の企画・プロデュースをしたのも川村元気さんです。

最近では、絵本『ぼく、モグラ、キツネ、馬』で翻訳家デビューをしています。

おみそ

多岐にわたって活躍されている方です♪

小説『世界から猫が消えたなら』感想【ネタバレなし】

消えるイメージを想起できるように、人が消えかけている画像を貼りました。
『世界から猫が消えたなら』 ネタバレなし感想

テンポよく話が進みますが、人生の意味を問う哲学的な物語でした。

自分にとって「消えてほしくないもの」は何か、考えさせられます。

【書評】テンポ◎構成◎テーマ性◎

テンポよく話が進み、内容もシンプルで、読書が苦手な人でも読みやすい小説でした。

『世界から猫が消えたなら』は「一日の命の代償として世界から一つ何かを消す」という悪魔の契約を交わした僕が、何かを失い何かを得ていく一週間の出来事を描いています。

物語の構造が分かりやすく、物語の世界に入り込みやすいのか特長です。

加えて、生きることの意味を問うテーマ性もあります。

物語としてはシンプルなのに、伝えたいことは深く本質的。

シンプルさと深さが両立している稀有な小説『世界から猫が消えたなら』です。

そこが、出版から10年経っても本書が愛され続ける理由なのだと思います。

消えてほしくないもの

本書を読み終わった後、自分にとっての「消えてほしくない人・もの」を考えていました。

家族、ペット、友人、恋人...

本、コーヒー、音楽、漫画、映画...

想像するものは人それぞれです。

当たり前すぎて、大切なものに気付けていなかったり、忘れてしまっていたりするかもしれません。

『世界から猫が消えたなら』

自分にとっての「猫」は何か。

そこにわたし自身の"生きる意味"があるのではなか、そう考えるようになりました。

「自分にとっての”猫”」を見つけられたなら、それを大切にし続けられる人生がわたしにとっての幸せだと感じています。

「消えてほしくないもの」をどれだけ愛し続けられたか、が人生の意味なのだと気付かせてくれた小説です。

【注意!】これ以降は、結末までのネタバレを含む内容になります。ネタバレを避けたい方は下のボタンを押してください。ネタバレ部分を飛ばすことができます。

ネタバレを飛ばす

小説『世界から猫が消えたなら』詳しいあらすじ【ネタバレ】

『世界から猫が消えたなら』の作中で時計が登場するため、時計の画像を貼りました。
『世界から猫が消えたなら』 詳しいあらすじ

小説『世界から猫が消えたなら』をより楽しんでいただくために、当ブログオリジナルの「詳しいあらすじ」を紹介します。

ストーリーのネタバレを含みますが、実際に小説を読むときに楽しめるよう、結末ネタバレは避けています。

月曜日 悪魔

僕があなたに宛てた最初で最後の手紙になります。

そう、これは僕の遺書なのです。

川村元気『世界から猫が消えたなら』

風邪が長引いていたは、あまりに治りが悪いので病院に行くことにした。

風邪じゃなかった。医者が告げた病名は脳腫瘍だった。

余命は長くて半年。医師の言葉は、耳に入らなかった。

帰宅した僕の目の前に現れたのは、自分とまったく同じ顔をした悪魔だった。

ただしアロハシャツ。僕はモノトーンな男だ。

悪魔が僕の前に訪れた理由は衝撃的なものだった。

「実は...明日あなたは死にます」

「何かを得るためには、何かを失わなければならない」

悪魔は僕にある提案をした。

それは、世界からこの世界から一つだけ何かを消す代わりに、一日の命を得ることができるという取引だった。

僕は一日の命を得る代わりに、悪魔の選んだものをひとつ、この世界から消すことにした。

はじめに消されることになったのは、電話

消す前に一度だけ電話を使うことが許された。

僕は、ある人の電話番号を思い出していた。

火曜日 世界から電話が消えたなら

「何かを得るためには、何かを失わなくてはならない」

川村元気『世界から猫が消えたなら』p45

今は亡き僕の母の口癖だった。

僕は猫とふたり暮らしをしている。名前はキャベツ。

母さんが拾ってきた猫だった。

前に飼っていた猫の「レタス」によく似ていたので「キャベツ」

夢から醒め、朝起きると電話が消えていた。

僕が最後に電話をかけた相手は初恋の彼女だった。

生きていた意味を確かめたくて、彼女と思い出話がしたかったからだった。

もうすぐ死ぬことを彼女に伝え、大学時代付き合っていた頃の話をした。

僕は思い出していた。電話さえあれば彼女といくらでも話すことができたことを。

僕は一つ、大切な思い出を失っていた。

「最後にあなたの好きな映画をここでかけてあげる。一緒に観よう」

明日、レンガ造りの映画館で会うことを約束して、僕と彼女はさよならをした。

水曜日 世界から映画が消えたなら

次の日、悪魔は世界から映画を消すことを告げた。

映画は僕の趣味だ。

消すかどうか悩んだ末、僕は映画を消すことにした。

自分がいなくなってしまえば、相対的に映画は存在しなくなるから。

人生の最後に観る映画を決めるべく、中学からの友人で映画オタクの友人「ツタヤ」が勤めるレンタルビデオ屋に行った。

「明日死ぬかもしれない」

「だから最後にどの映画を観るか、いますぐ決めなきゃいけないんだよ」

僕は友人の「ツタヤ」とともに最後の映画を選び、約束通り彼女とともにそれを観た。

僕は、友人との思い出を一つ、失った。

木曜日 世界から時計が消えたなら

昨日の夜悪魔から告げられたのは、次は時計を消すということだった。

4年前から絶縁状態にある父親は隣町で時計店を営んでいた。

世界から時計がなくなってしまったら、父の仕事はなくなってしまう。

そう思うと少し胸が痛かった。

僕は、世界から時計が消えた日、悪魔の魔法でしゃべれるようになった愛猫「キャベツ」といっしょに、母との思い出を振り返っていた。

世界から時計が消え、僕は家族との思い出を一つ、失った。

金曜日 世界から猫が消えたなら

僕は忘れていた。

目の前にいる僕と瓜二つのアロハシャツの男は、悪魔だということを。

「頼む...やめてくれ」

悪魔は言った。

「この世界から猫を消しましょう」

僕はどのような決断をするのか、続きは小説をお楽しみください。

※『世界から猫が消えたなら』をもとに作成

『世界から猫が消えたなら』伝えたいことは?~テーマ解説~【ネタバレ】

『世界から猫が消えたなら』のテーマの一つ、父と子の関係性を想起できるよう、父と子が映った画像を貼りました。
『世界から猫が消えたなら』が伝えたいこと~テーマ~

失って初めて当たり前にあったものの大切さに気付く

『世界から猫が消えたなら』が伝えたいことの一つです。

ですが、わたしはもう一つ隠されたテーマがあると思っています。

それは、人生で最も大切なものの一つは「大切な人たちとの思い出」である、ということです。

次の三つに分けて、『世界から猫が消えたなら』のテーマを紐解いていきましょう。

テーマ解説

  • "死"に対する価値観の変化
  • 家族を繋ぐもの
  • 「あってもなくてもよいもの」

"死"に対する価値観の変化

僕の"死"に対する価値観は、日に日に変化しています。

死生観、これが『世界から猫が消えたなら』のテーマの一つです。

月曜日。脳腫瘍で余命わずかだと宣告されたとき、僕は意外にも落ち着いていました。

思い出すことと言えば日用品をまとめ買いしてしまっていたといった取り留めもないことばかりです。

ですが、電話、映画、時計...と次々に世界からものが消えていく過程で、僕の自分の死への思いが変化します。

火曜日

突然、頭の右はじがジリッと痛みだす。胸が苦しくなり、呼吸ができない。ひどい寒気がやってきて、震えが止まらない。歯がガチガチと音を立てる。

やはり死ぬのか。いや死にたくない。

川村元気『世界から猫が消えたなら』p83

水曜日

死ぬときに浮かぶのは、あるべき未来への後悔だ。

川村元気『世界から猫が消えたなら』p104

木曜日

頭の右はじがまたジリジリと痛み始める。息が苦しくなる。

僕はまだ死にたくない。まだ生きていたい。

そして明日また僕は、この世界から何かを消すのだ。

自分の命のために、自分の未来から何かを奪って。

川村元気『世界から猫が消えたなら』p140

金曜日

母さん、死にたくないよ。死ぬのは怖いよ。

でも、母さんの言うとおりだ。

何かを奪って生きていくのはもっと辛いよ。

川村元気『世界から猫が消えたなら』p185

土曜日

無数の失敗や後悔、叶えられなかった夢、会いたかった人、食べたかったものや行きたかった場所。とにかくそんなものをたくさん抱えながら僕は死んでいく。

でもそれでいいんだ。僕は今の自分でよかった。

ここではないどこかではなく、ここにいてよかったと今は思える。

川村元気『世界から猫が消えたなら』p200

土曜日。

「これでいい」と自分の人生に納得できた僕は、最後、生きているうちにやり残したことをしにいきます。

僕は、父親に会いに行きます。

父のいる、隣町にー

家族を繋ぐもの

『世界から猫が消えたなら』は家族の物語です。

電話、映画...と僕は世界から何かひとつ消すごとに僕は大切なことに気付いていきます。

元恋人、友人と会い、自分の人生と向き合ってきた僕は、最後に"家族"と向き合うのです。

すべてを包み込んでくれた母、最期まで一緒にいてくれたキャベツ、つまらないことでいがみ合って疎遠になっていた父。

時計が消えてから家族と向き合う過程で、僕は家族の在り方を見つめ、あることに気付きました。

家族って「ある」ものじゃなかった。家族は「する」ものだったんだ。

川村元気『世界から猫が消えたなら』p176

「あってもなくてもよいもの」

「何かを得るためには、何かを失わなくてはね」

川村元気『世界から猫が消えたなら』p45

失うことで「あってもなくてもよいもの」の大切さに気付きます。

映画にも、音楽にも、コーヒーにも、なんにだって存在する意味があるのかもしれない。

無数の「あってもなくてもよいもの」が集まり、その外形を人型にかたどって「人間」というものが存在している。

この一文は『世界から猫が消えたなら』のテーマを象徴しているように思います。

「電話」「映画」「時計」はすべて"大切な人"につながっていました。

「恋人」「友人」「家族」

大切な人との思い出を紡ぎながら、最後は父親との思い出につながる。

父親も僕の「大切な人」

最後の後悔を埋めるため、僕は父親に会いにいったのでした。

母の思いを叶えるために。

「大切な人」「かけがえのないもの」がある、それがこの世界に僕が生きる意味。

あわせて読みたい"せか猫"名言集

【関連書籍】失って気付く、その前に...:『世界から猫が消えたなら』

世界から猫が消えたならの関連書籍の画像を貼りました。
『世界から猫が消えたなら』関連書籍

『世界から猫が消えたなら』で僕は、電話や映画、時計と引き換えに命を得ることで、大切なことに気付いていきました。

残念ながら、実際には、わたしたちが死ぬ前に悪魔がきて魔法を使ってくれることなんてありません。

この物語を通して、生きることと向き合うことで、失わずとも大切なことに気付くことができます。

ですが、「失って初めて気付く」のはあまりにも悲しすぎますよね。

そこでここでは、失って後悔する前に、人生の大切なことに気付ける本を3冊紹介します。

『死ぬ瞬間の5つの後悔』

内容

終末期の患者に携わる在宅介護の仕事をしている著者が、多くの患者を看取る中で気付いた「死ぬ瞬間の5つの後悔」について書いた本です。

実際に看取った患者とのエピソードがメインで語られます。

患者が最も後悔することは「自分に正直に生きなかったこと」だそうです。

ひとくち解説

本書の一番の特長は著者が実際に看取った終末期の患者とのエピソードが書かれていることです。

『世界から猫が消えたなら』の主人公・僕のように、死を目の前にした人の感情が痛いほど伝わってきます。

文章量が多く内容も平易ではないため、決して読みやすいものではありませんが、生きているうちに一度は読みたい本です。

レビューをチェックする

『あした死ぬかもよ?』

内容

「いまこの瞬間死ぬとしたら、あなたは後悔しますか?」

自分の人生と「死」と向き合い、幸せに生きるための28の質問について書かれたひすいこうたろうさんの著書。

人生の最後の日に後悔しない生き方・価値観を紹介しています。

ひとくち解説

著者のひすいこうたろうさんが読者に投げかける質問と向き合うことで、自分なりの幸せを探究できる本です。

Q&A形式で書かれていて読みやすいです。人生と向き合いたいと思ったらまず読みたい一冊です。

レビューをチェックする

『このあとどうしちゃおう』

内容

大人気絵本作家・ヨシタケシンスケの「死」と向き合う絵本です。

亡くなったおじいちゃんが死んだらどうなりたいかを書いた「このあとどうしちゃおうノート」を読みながら、「ぼく」が生きることと死ぬことに向き合うお話。

ひとくち解説

ゆるかわいいイラストで描かれていて楽しく読むことができますが、内容は非常に本質的!

絵本だからと侮ってはいけません。

子供向けに書かれた本ですが、個人的には大人こそ読みたいヨシタケシンスケの傑作絵本です。

レビューをチェックする

まとめ:小説『世界から猫が消えたなら』あらすじ・感想&解説|消えてほしくないもの

『世界から猫が消えたなら』の感想記事のまとめだと分かるようアイキャッチ画像を貼りました。
『世界から猫が消えたなら』まとめ

川村元気作『世界から猫が消えたなら』のあらすじや感想を解説しました。

この記事のまとめです。

まとめ

  • 『世界から猫が消えたなら』は、余命わずかの主人公が何かを失う代わりに一日の命を得る不思議な一週間のお話
  • 『世界から猫が消えたなら』のテーマは「生きる意味」「大切なもの」「家族」
  • 生きることと向き合うなら関連書籍を読むのがおすすめ

最後まで読んでいただき、ありがとうございました!

この記事が少しでもあなたのお役に立てれば幸いです。

おみそ

それではまたお会いしましょう♪

おみそのつぶやき:『世界から猫が消えたなら』の次に読みたい小説

おみそ

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おみそ

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おみそ

「読書で、人生に彩りを。」くもゐなす茶房では、ブログを読んだ人が月1冊以上の読書を楽しんでもらえるよう、本当に面白いと思った本だけを紹介しています。記事を書いているのは、年間100冊以上の読書を楽しむ、くもゐなす茶房の看板猫|”おみそ”です。おみそと飼い主と一緒に喫茶店でお話している感覚で楽しんでもらえたらうれしいです✨ 詳しいプロフィールはこちら

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